葬儀や法事など仏事供養の際に僧侶に支払う謝礼の意味で使われている「布施」という言葉。
曹洞宗の開祖・道元禅師様は「布施といふは、貪らざるなり、へつらわざるなり」とお示しになっています。これは「布施とは貪らないことであり、媚びへつらわないことである」ということであり、あくまで道元禅師様は謝礼という言い方はなさっていません。
私たちはこれをどのように受け止めながら、日々を過ごしていけばいいのでしょうか。
「無縁社会」という言葉で言い表される現代において、私たちは自分と他者とのつながりを感じにくくなっています。しかし、本来は「有縁」であり、それが仏教の指し示すところでもあります。私たち一人一人が相手を知る・知らないに関係なく、人やモノ、動植物や大自然といった、様々な存在と見えない糸でちゃんとつながり、お互いに関わり合っているのです。
そうした自分とつながっているモノや大自然にたいして、欲望のままに関わることを慎むこと。そして、人に対して、自分の好みだとか、地位・性別等、自分の見た目の情報だけで、接し方を変えるような差別的なかかわり方をしない。それが道元禅師様のお示しになっている「布施」なのです。
他者と関わるときに、誰に対しても、どんな存在に対しても、相手に対して‶大切にしてますよメッセージ″を込めた言葉や行いを心がけ、それをお互いに施し合っていくという「布施」の生き方を実践し、日々を過ごしていきたいものです。
宗務所