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今月の法話 2021/06/30

宗務所

7月の法話 ~汝(なんじ)手を切り足を切ることなかれ~

~汝(なんじ)手を切り足を切ることなかれ~

蒸し暑い日が続いております。ワクチン接種も拡がりつつ、オリンピック開催予定日もさし迫り世界の注目が東京に集まっています。
 先日はお檀家さんのお家にお手伝いに行ってきました。土地の境界に植えた杉、アテの木が大きく育ちすぎて枝打ちの世話も出来ないので切り倒す仕事です。大工職人のシブさん(仮称)が手際よく進められ、無事終えることが出来ました。するとシブさんの奥様が塩を手に取りお清めにパラパラと撒いて「お家の土地にある木を切るときはこうやって塩をまくのが習わしなんです。」と話してくれました。
 とくに大工職の方は験(げん)を担ぐと聞きますが、実際に目にしてみるとふと思い出すことがあります。啓白文(けいびゃくもん)といって法要の趣旨を表わす言葉がありますが大樹などの切り倒した時にも『永らく樹木の木陰にて虫鳥などに生きる場所の恩恵を与えたけれども故あってここに伐採することになったことを許して欲しい』という風に呼びかける一文があります。
人によってお経であったり、塩であったり、また苗木をよそに植えたりといろいろな事をします。それはなんらかの大きな命に敬意を感じ取っているからではないでしょうか。ただ、そこにあるものが邪魔だから切り捨てる、という発想では絶対に届かない視点だと思うのです。~宝剣手にあり殺活自在(せっかつじざい)、汝手を切り足を切ることなかれ~(智慧を正しく使わないと間違った方向に行ってしまいますから気をつけてくださいね。)修行中に一生懸命に覚えた言葉が浮かんできました。
 目に見えないかもしれないけれど何か恵を受けているかもしれない。梅雨から開けて7月たくさんの生き物が色んな草木の元に育まれたことかと思います。同じ目線に立ってみるとちょっと違って見える気もします。
 
 ただ作業をしていただけだと仕事が終わって早く休憩したいなあと愚痴をこぼしていたかもしれません。なにげない奥様の所作に教えていただきました。労っていれていただいたお茶の味もおいしく感じます。
休憩の時に外で冷たいお茶をいただきながらそんなことを考えていた午前中のことでした。