「諸悪莫作(しょあくまくさ)」~悪いことをしない心がけ~
朝の寒気が一段と冷え込みます。布団からでるのに思い切りがいる季節でもありますが、自坊で朝鐘を撞くときに空を眺めると、夜明けが少しずつ早くなっているのを実感します。春が近づいていますね。
二月の行事と言えば節分が有名で、全国の神社仏閣で節分会、豆まきが行われます。今年は残念ながらコロナ感染予防の為に自粛が相次いでおります。
そんなわけで外に出る機会も少なくなり資料動画を整理していると、一昨年の動画に家族対抗の豆まきに参加した様子がスマートフォンに残っていました。当然大人達は鬼役が○○君のお父さんだとわかっているのですが、子ども達にとっては見知らぬ異形の鬼が強襲してきますので即座にパニックになってしまいます。泣きながら「もう悪いことはしません!」と母親にすがりつく姿は気の毒なのですが、どうしてもほほえましく見えてしまいます。
そういえば自分も小さい頃、こたつにあたってウトウト居眠りしたところへ鬼の訪問をうけて大泣きしたことがあったなあ・・と思い返したりもしました。
こういった恐い体験をする民間儀礼としては秋田の「なまはげ」があり、能登では「あまめはぎ」などの伝承が残っています。
こどもの頃に畏怖を通じて根っこのところに悪いことはしない(まっすぐな人間として生きる)ことを心がけるように心理的刷り込みを儀礼を通して体験し道徳心を身につけていく。ある意味理にかなった行事です。
さて、悪いことをしません良い行いをします。これを仏教では七仏通戒偈(しちぶつつうかいげ)というものがあり“諸悪莫作” (しょあくまくさ)“衆善奉行” (しゅぜんぶぎょう)、“自浄其意”(じじょうごい) “是諸仏教”(ぜしょぶっきょう)という句があります。訳しますと、悪いことはを為さず、善行につとめ、自分の心を清めること、これが諸仏の教えであるということになります。
これこそ仏教の極意で幼子にもわかりやすい。ですが一日心がけて、一週間、一ヶ月と続けていくほどに実践するには老人にもむずかしいと道元禅師も『正法眼蔵』に示されています。
この物差しが壊れないように、ふと思い返したり立ち止まったりしながら、いろんな経験を積んで大人になっていくんだなと、改めて自身の行いを顧みる気持ちになりました。
季節の変わり目に鬼(邪気)が不安を持ってくると伝えられています。鬼を払う節分会。豆をまけないかもしれませんが、鬼は外、福は内、邪(よこしま)な心が入り込んで悪いことをしないように日々努めたいものです。
宗務所