2月15日は仏教の開祖・お釈迦様のご命日です。享年80歳。そのご生涯は35歳のときに坐禅修行を通じて体得なさったお悟りを多くの人々にお伝えしながら、苦悩する人々に救いの手を差し伸べるというものでした。実に理想的であり、私たちの模範となる生き方ではないかと思います。
享年の“享”には「いただいた」という意味がございます。お釈迦様はこの世にいただいた80年という時間・いのちを世の人々のために使い切ったのです。お釈迦様同様に、私たちもいのちをいただき、この世に生かされています。そのことに思いを巡らすとき、時間を浪費せず、毎日をしっかりと生ききることを心がけておきたいものです。
お釈迦様が生涯を終えたことを「涅槃に入る」と申しますが、その瞬間は静寂であり、お釈迦様の死後、お弟子たちは夜通し生前のお釈迦様との思い出話やいただいたみ教えなどを語らい合って過ごしたと伝えられています。これが今の「お通夜」の起源です。こうしたお通夜の起源を考えるに、お通夜を亡き人と向き合い、別れの覚悟を固める場として、略さずにおつとめしていきたいと感じるものです。
そんなお釈迦様が最期にお弟子様たちにお示しになったことは、いくつかに大別できますが、今回はタイトルにもありますように「五根を制す」ということについて触れておきます。
五根とは私たちの5つの感覚器官のことで、「眼・耳・鼻・舌・身」を意味しています。お釈迦様は我々にこの五根を調えて毎日を過ごすようにお示しになっています。
すなわち、
①眼は自分の見た目の情報に捉われ、自分の好悪で相手との関わり方を決めるような使い方をしない
②耳は聞こえのよいことだけを受け止めるような都合のいい使い方をせず、どんな音も受け止める
③香りのよいものだけを認める鼻の使い方をしない
④ごちそうのみに価値を見出すのではなく、どんなものも喜んでいただく舌の使い方を心がける
⑤悪意に満ちた言葉や行いを発して、周囲に不快感をもたらさないような身体の使い方を目指していく
それが「五根を制す」ということなのです。
「いただいたいのち、どう生きていくのか」という問いに、お釈迦様が最期にお示しになった「五根を制す」というみ教えを参考に、日々を過ごしていきたいものです。
宗務所